六本木の楽しみ方


国立新美術館が好きで頻繁に出かけます。あの建築が好きだし(追悼・黒川紀章さん)、歩いて行けるので便利。
「牛乳を注ぐ女」に会いに行ってきました。
でもね、これ一点だけしか来てないのです、フェルメールの作品。
一点なのにフェルメール展って、正直随分大胆だと思った(笑)。
音声ガイドを借りて鑑賞。エッチング、版画など脇役たちの数が多く結構なボリュウム。
美術鑑賞って、絵の傍に丁寧な説明もあるので真剣に全部を真面目に堪能しようとすると結構パワーを使います。
好きなものを好きなだけ観て、やっぱりまだ観足りなかったらまた来ればいいというのが私の鑑賞スタイル。そうすると気楽に楽しめます。
今日も思う存分、主菜「牛乳を注ぐ女」を味わいました。推理小説を読むように謎解きしながら。
たとえば、赤いスカート、青いエプロン、白い頭巾は清く正しい=聖母マリアを象徴しているとか、パンはキリストの肉体を、果物は性的な喜びを、ミルクは一籌の豊かさを表しているといった風に。イコノグラフィー(伝統的図像)やイコノロジー(図像解釈学)と言われる約束事だそうです。賭け事や色恋事を戒める教訓的な意味があるらしく昔の貴族達はこのルールにしたがって絵の中に画家が潜ませた“仕掛け”を読み証すことで教養の深さを競い合ったとか。
ある絵の前で解説の声は「雄鶏は男性の象徴で、露出度の高い服で酒のグラスを微笑みながら磨くの行為は、使用人の女が好色であることを意味します」なんて結構ドギツイことを爽やかに言ってる。その時私の視界に、音声ガイドのヘッドホンをした小学生高学年くらいの男の子。ヘッドホンなしの母親らしき人がぴったり付き添っている。母親はまさか音声ガイドがそんなこと言ってるなんて思ってないんじゃないかしら。「多感な小学生男子、大丈夫ですか?お母さん。」なんて思ってしまった(笑)。彼は一生懸命観てました(笑)。
謎解きという意味では「鸚鵡の鳥かご」(ヤン・ハーフィクスゾーン・ステーン)という絵がなかなか興味深かった。
フェルメールを愛でた後、麻布十番のコリアンへ。サムゲタンをパクつきながら友人C夫人に一日を報告。「でも、この絵が日本に来てる間アムス(「牛乳を注ぐ女」を所蔵しているのはアムステルダム美術館)の壁が空欄になってるのは凄い不思議な感じだね。」そう言われてみればその通り。帰宅してネットで調べてみると日経ビジネスに学芸員の方のコメントが載っていた。
なるほど、現在アムステルダム美術館は改装中。ご自慢のフェルメールを眠らせておくのはもったいないということで日本に出稼ぎに来ている模様。そういえば、オランジュリーが来てた時もPARISのほうは改装中だった記憶がある。「なんとか展」てそういう場合に多いのかもしれません。
アムステルダム国立美術館では、《牛乳を注ぐ女》は常設展示で一番の目玉作品ですし、この作品を目当てに、世界各国から人々が同美術館を訪れるのですから、海外に長期貸し出しをするのは今まで以上に難しくなると思います。」どうやら日本へ来るのは最初で最後らしい。BARで飲んだりミッドタウンでお買い物だけじゃ、あまりにもったいない秋の六本木、物欲と知識欲のセット(笑)で満喫したいものです。