いま、読んでる本 

RURIKO

RURIKO

林真理子って、今まで縁がない作家でした。その昔ばか売れした「ルンルンを買っておうちへ帰ろう」を一度だけ読んだ覚えがあるけど、「あ、痛い」ってことだけが後味、内容は全然記憶に無く、覚えているのは「こんな風にはなりたくない!」ってことだけ。女性作家の作品を読む時って、私の場合、どこかに共感だったり、憧れだったりがないと読みきれない。だから、最近、本屋で特等席を陣取り山のように積まれているこの本を見ても何にもひっかからずだったのですが...。
待ち合わせの時間つぶしで魔が差したのか、3回目で初めてパラっとめくってみました。ローマ字で書かれたその名前、RURIKOとは、女優浅丘ルリ子のこと。開いたページは、ちょうど、寅さんの映画に出たころ。その瞬間、手にとってレジに向かっていました。何を隠そう、私は寅さんシリーズのファン。母親に「変わってるわねえ」と呆れられながらもあの人間愛と旅の孤独と出会いが詰まった世界はとても魅力的、ラストは必ず、妹のさくらと兄寅さんの別れのシーン、「てやんでい!兄妹ってやつはいいよなあ」と思いっきり泣いた後はココロがきれいになった気さえするのです。映画の中でリリーというキャバレー歌手が出てきます。恋多き寅さんだけど、唯一、彼が本当にココロを許した女性がこのリリー、浅丘ルリ子が演じているのです。明るくて子猫のように可愛らしく、たくましいけど、実はか弱い女性を魅力的に演じています。どんなマドンナに対しても客観的で感情移入することはなかったけど、このリリーだけは特別でとても共感できるのです。
そんなリリーを演じた浅丘ルリ子って人はどんな人なのか、いま、まだ読み進めているところだけど、意外だったのは、読み手に林真理子の色を全く感じさせないということ。まるで浅丘ルリ子の自叙伝でも読んでいる錯覚にさえ陥ります。きっと事実に基づいたフィクションではあるのでしょうが、その時代や登場人物がどんなキャラクターを持っていたかが忠実に描かれていているような気がして、作家の底力を感じながら気分良く楽しんでいます。