Voyagez en vacance!《森瑤子の本》

    
美しいモノとの出会いこそ、まさに旅の喜び。
それは、ショーウィンドウのアンティークの銀細工や手織りのシルクストールだったり、市場のウロコも目もぴかぴかの魚だったり、はるか昔のゴシック調の建築物やステンドグラス、神々しい山々の景色かもしれない。旅先でのまだ見ぬ美しいモノを想像し、あれこれ思いを巡らせては心が躍る。
旅アイテムその3は1996年初版の森瑤子の、この本。
著者の作品をかたっぱしから読み漁っては、めくるめくオトナの世界(!)に「早く30歳になりたい」とため息ついていた頃この本に出会い、カバーが無くなってしまった今も幾度と無く読み返しています。必ずしも価格の安い高いだけではなくモノ自体が発するストーリー性を重視し自身の審美眼をもって選んだ「著者にとっての特別な品々」。時代が変わっても本物のよさは変わらないことをよくよく教えてくれる、オトナ本です。

    
ラリックのショットグラス、ラッピングなしのむき出しで愛する男性のポケットから無造作に差し出されプレゼントされたという粋でキザなエピソードが添えられていて、今読み返すとバブル期を象徴するようで気恥ずかしくもあり、でもやっぱりこういうの素敵だし興味深いなと思ったり。

    
特筆すべきは写真とディスプレイの美しさ。これはモロッコの酒瓶。マラケシュの砂漠を彷彿させる赤い砂。まだ未踏の地モロッコへの憧れはこれがきっかけかもとか思ったり。
少しづつ、旅への憧憬を駆り立てては、旅することの幸せを今から堪能する日々であります。