愛しいひとといっしょに。

かもめ食堂」という映画がちょっと前に流行りました。ストーリーも映像も俳優陣も脚本も、すごく素敵だと思って大好きになりました。
あの中で出てくる、シナモンロール、おにぎりなんかが、あまりに悠然とおいしそうで幸せな空気が漂っていたから忘れられないままにいました。数年経って偶然見た食パンのCM、森の中でチーズを溶かしてパンでフォンデュして食べてる小林聡美の姿。間違いなくあの映画と同じ空気感が流れてる!と直感し、調べてみたら「かもめ食堂」も「食パン」も全て飯島奈美というフードコーディネイターによるものだと分かりました。
この本は、その人が作ったいわゆる「ふだん着のおいしいものレシピ本」。すごいのは、レシピに混ざるエッセイたち。谷川俊太郎よしもとばなな重松清糸井重里とソウソウたるメンバー。
糸井さんは、おいしいものを作り、おいしいさを共有する時の喜びをこんな風に書いています。
「目の前にいる恋人がうれしそうに口に運んでいる料理を、いちばんおいしがっているのは、あなたでしょう。こどもの皿に、おかわりをよそっている時のあなたは、誰よりもそのおいしさを楽しんでますよね。まずは、自分のアレンジなど加えずにレシピどおり作ってみてください。そしてそれを好きなひとと一緒に食べてください。こつはそのふたつだけです。」
たとえ慌しい毎日の中でも、おいしいものをゆったりと味わうことで人はいかに心が癒され幸福感に包まれるか。たぶんそれは、独りぽっちで高価なものを食べ歩き批評するといった種類のものでなく、むしろ、ささやかなおいしさを大切なひとと分かち合うことを言っているように思います。
愉しく豊かな人生、もし本当の意味で共有できる人がいたら、その愉しみや豊かさはきっと倍以上。
さっそく、「おとうさんのナポリタン」を作ってみたくなりました。